詩とメモ

「自警団」

事実を集めても視力が弱っているので
僕になんて集まらないぞと思った
虫が歩行しているのが見える
手を出せば毒がこちらに回ってくる
そういう発想の裏にある
こちらの毒も向こうにいくのだ
僕たちは自身が毒であることを忘れ
清廉潔白である自己イメージを保持したが
屠殺した動物のイメージを捨象している

どこか高いところの宮殿に住まわしている
あの貴族どもを追い払いたい
落下させて腐ったリンゴを食わせるのだ
真っ白い歯をへし折るのだ
司祭階級はクーポン券をばらまき
僕たちをあっという間に従順にさせてしまうけれど
僕たちが抵抗を忘れたのは 僕たち自身の忘却にすぎない
彼らの体に火をつけるのは祝祭のとき
けっして理知的な瞬間ではない



 

「泥棒」

けっきょく泥棒権力はつかまらない
彼らの完璧なアリバイは僕たちが補完するから
誰も彼らを悪者にしたくないんだ
彼らとは僕たちの言い換えにすぎないから
僕たちは権力に憧憬し服従する
マゾヒズムを差し出すかわりに飼育をねだる
僕たちは権力に飼育されたい犬なのだ
ペットは家畜を差別する
僕たちはペットとなり 主人に仕え 家畜を見下す

僕たちは保護されているんだ
安楽な生活を約束されている
やわらかい絨毯の上からしりぞきたくない
家畜はその命を僕たちの安楽のために差し出す
僕たちはその命を食らうことができる
家畜は権力をもっていないから
僕たちは権力に従っているから
僕たちは内心家畜にはなりたくないと恐怖している
ペットの特権を失いたくないから
主人の機嫌をそこねないように
その髭を愛撫し身を委ねる

 

 

 

「光」

もうこれ以上限界だと思った
二重生活では蛍光灯の光もまばゆくて
長らく眼をあけられていない
変な虫が髪の毛にまとわりついてくる
その虫とだんだん同化するように
僕の体も変わった

光をはっきりと見定めていたころ
僕は体の中心から地球の中心を推し量った
その計量を持続することが肝心だった
ぎりぎり詰めていくような作業に耐えられず
一羽の鳥のメタファーに逃げ込んだ
鳥は未来を羽ばたく鍵を落として
僕はそれを拾う主体となった

 

 

「自詩」

二重人格のまま潜入取材をしているんだろうか

ポテトとプルツー卒塔婆までいく時頃

俺の取材はアウトプットを迎える

は そんな計画は思案してもいないのに

それらしく書いてみる

かつては希望の蛍光灯が元気で

目を細めて悦に浸ってた

軽率なやつらと同じ次元で

軽率じゃないことに取り組んだ

同じようなことをしていた連中の

何人かが成功し何人かが死んだ

コンクリートの壁がそびえたつ

爪を立ててもただ痛いだけ

死んだ人間の立てた爪の跡がみえる

俺はああなりたくない

TNT爆弾を製造するのは

世間への嫌がらせだ

本当に爆発させるつもりはないが

だからといって何もしないつもりもない

まぶしいまぶしい蛍光灯

すすぼけて切れてしまったろうか

目を細めても視力がもたなくなった

盲目のテロリストが

破壊する構造を発見せよ

いまここであからさまになった

世界の不平等と無関心に

 

 

 

「赤い塔」

赤い塔に登っていた

高い壁の向こうに笑い声がきこえた

空には天使がいるようだったが、陽射しがふらない

ここではなく向こうにふっていた

呪いの気持ちがやってきた

赤い塔に登りきれば革命がおとずれる

赤い人がいっていたからだ

革命はしかし

役に立たない

すぐに萎えてしまわれてしまう

革命という勃起のなかで

果てれば消沈してしまうのだ

そうこうするうちに陽射しは

永遠に向こうにふりそそぐ

私は

呪ってみようと思うが

そんな気持ちも起こらなかった

むしろ消えたいと思った

 

 

 

メモ

大山顕さんの指摘。確かに。

大山顕/毎週金曜日22時から「都市を現像する」 on Twitter: "これすごくはっとした。言われてみれば、ここ10年ぐらい、ぼくらの言動は「ロールプレイ」になってしまっているような気がする。なんというか、だれもかれもがポジショントークしかしてない、という感じ。… "